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みずいろきんぎょ 前編

「みずいろきんぎょ」


ちいさな兄妹みのるとくるみが主人公
のちょっと不思議な、心がそっとあた
たくなるようなお話です。
3回に分けてアップします(^^)


1.


みのるは窓の外を ちらりと見ました。
太陽はもうすっかり沈み ただゆさゆさと 木の陰が恐ろしげに揺れているのが見えるばかりです。
今夜は嵐になるかもしれないと さっき出かける前にママが言ったのを思い出していました。

となりに座っている小さな妹 くるみは お気に入りのうさぎのぬいぐるみを抱きしめたまま ソファから動こうとしません。

「だいじょうぶだよ くるみ。お兄ちゃんがついてるから 怖いことなんてないさ」

パパとママは急に用事ができてしまい ゆうごはんのあと 出かけてしまいました。
「みのる くるみをお願いね。そんなに遅くならないようにするから」
ママは心配そうに言いましたが もうずっと前から 妹を守るのはじぶんの役目だと みのるは ちゃんとわかっていました。

けれどくるみは うさぎを抱いたまま 泣きそうな顔です。
外ではうおーんと 風がうなりはじめました。
「ママがいないと いやだ!」
くるみの言葉が、みのるの胸をひんやりとさせました。

ぴちょん。

水の音?
玄関においてある、金魚ばちでしょうか。
1年前 くるみが おねだりしてパパに買ってもらった、きれいな金魚。
みのるは この部屋にもってきてやろうと思いつき、走り出しました

2.

あわててしまったからでしょう。
かかえ上げたとたん つるりと手がすべり 金魚ばちは床の上で こなごなに くだけてしまいました。

ガラスと少しの水の上で 赤い金魚はぴちゃぴちゃと飛びはねます。
みのるは慌てて水を入れたコップを持ってきて はね回る金魚を追いかけましたが やっとつかまえたときには その金魚は 動かない小さなかたまりになっていました。

コップの中にそっと入れても もう あのきれいな泳ぎを見せてはくれません。

妹のだいじな金魚だったのに。
みのるは声をあげて泣きたくなりました。
けれど今 さびしがっているくるみに この金魚を見せるわけにはいきません。

みのるはガラスを片づけ こぼれた水をふき そして風の吹き荒れる庭に出て、かわいそうな金魚を土にうめました。

ごめんね ごめんね と 心の中でなんども謝りながら。

3.


玄関にもどると うさぎを抱きしめて くるみが 泣いていました。
「おにいちゃん どこにいくの?」
みのるまで どこかに行ってしまったのかと思い 心細かったのでしょう。

「どこにも行かないよ だいじょうぶだから」
そう言ってやると ほっとしたようでしたが その目は あのお気に入りの金魚がいたあたりを 見つめています。
みのるが一番おそれていたことです。
「おにいちゃん くるみの金魚は? 金魚がいないよ?」
その声は今にも泣きそうで みのるを慌てさせました。

「金魚はいるよ ちゃんといるんだ」
みのるはいっしょうけんめい考えました。
くるみを悲しませちゃいけない。

「金魚はね おとなになったから 水色になったんだ。 それに、もう水がなくても平気でさ。 ふわふわ この家の中を 泳ぎ回ってるんだ」

思わずそう言ってしまうと、くるみはおどろいたように みのるを見つめました。

4.

「そんなのうそだもん くるみの金魚はどこ? おにいちゃんのうそつき!」
くるみの顔はみるみる赤くなり またぽろぽろと 涙があふれ出しました。
さっき拭いた床の上に 涙の水たまりができそうないきおいです。

ごめんね と あやまりたいのに どうしてもそれが言えず、みのるは いるわけもない水色の金魚をさがすように あたりを見回しました。

「ほんとうだよ。いるんだってば」
「いないもん おにいちゃんのうそつき」
その言葉はとても悲しく みのるの中にしみこみました。
うそつきなのは 本当のことなのですから。

「うそじゃないですよ」

それはポンと はじけるような 軽やかな声でした。
もちろんみのるの声でも くるみの声でもありません。

「ほんとうです。 水色きんぎょは ちゃんといるんです」

2人があわてて声のほうを振り向くと、げた箱の上で、小さなねずみが 初めまして と 頭を下げました。




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